“私は涙が出なかった。家が全焼したということも、叔母が遺体で発見されたということも、日本語としては理解できるのだが、イメージが描けな
い。ゆえに、口から出る言葉も、「どうしちゃったんだろう」「どうしてそんなことになったんだろう」「信じられないよ」「想像できないよ」、
そればかり。現実のことだと思い込もうとしても、いつまでたっても合わないピントのレンズを覗き込んでいるような気分で、その要領の悪さを恥
じ入る気持ちもあって、私は薄ら笑いさえ浮かべてしまうのだった。”

水牛のように2014/07

出典: suigyu.com


実家が貧乏だったり、祖母の介護が必要だったり、親があまりよくなかったり。
そういう事情で不本意な十代後半‐二十歳代前半を過ごした身にとっては、他人事ではなかった。
俺も「なんで俺より馬鹿な奴が大学に行ってるんだろう」、「なんで俺は裁判所で弁護士と打ち合わせしてるんだろう」、「なんで俺が婆さんの糞の世話をするのだろう」、「なんで俺ばかりがこんな目にあうんだろう」、「俺はなにか悪いことをしたのだろうか」。
二十歳前後のころは、そんなことばかり考えていたから。

加藤の行動は彼なりの公平観から出ているんだと思う。
親や家族のせいで、理不尽な苦しい人生を送る自分。対して、自分よりは周囲に恵まれて幸福な他人。自分と他人にはバックアップの面で明らかな差があるのに、『平等』に『公平』に評価されて『お前は誰よりも劣っている』と告げられる。
異議申し立てをすれば、『生まれの問題は諦めろ。お前だけが不幸な生まれなわけじゃない。努力が足りない。甘え』と突き放される。
だからこう思う。
『よしわかった。生まれた家庭や環境が理不尽な災害のように諦めるべき不幸であるのであれば、それは公平に起きるべきだ。理不尽な幸福に浸る者は、理不尽は不幸によってある日終わりを告げられても、諦めるべきなのだ。彼らも、俺のように。これこそ彼らがいうところの『公平な社会』の実現だ』

俺ははじめ、加藤の気持ちはよくわからないところもあった。
でも、3.11の日に津波が、なにもかも公平に平等に理不尽に飲み込む光景を見たときに、はじめてわかった気がした。
「ああ。加藤はこれになりたかったのだ」

秋葉原通り魔事件の加藤ってそんな悪いやつだったか? (via naonanigashi)

出典: alfalfalfa.com




http://seepassyouagain.tumblr.com/post/88565068777



―豊田さんは一時期メジャーレーベルに在籍してましたけど、そのへんの感覚は違いましたか。

豊田:全然違いますね。ぼくなんて30歳まで、ライブのギャラは最高5,000円でしたよ。どんなビッグなミュージシャンの前座をやっても、「お前、5,000円やるわ」で終わり。ライブでカネを稼げるなんてことが、まずなかった。CDだって、メジャーで最高5,000枚売りましたけど、印税は30万円ぐらいでしたよ。だから、いまの若い子たちがインディペンデントでカネを回して自活しているのはすごいと思う。ただその反面、それでいいのかな? ってふと思ったりもしますね。

年の差17歳の危うい対談 豊田道倫&大森靖子 - 音楽インタビュー : CINRA.NET

出典: cinra.net


と、今回はそんな甘い感想を書くのが目的なのではなく、
本書で取り上げられている「西成暴動」で思い出した、
山本精一(羅針盤、ROVO、ボアダムスetc)の『ギンガ』。
もうこの本は入手しづらくなっているらしいので、少し長いが引用してみよう。
彼の手にかかると、西成暴動はこんな感じになってしまうのだった!

 (略)
 こんな話を聞いていて、私は唐突に五年前の〈西成暴動〉を思い出した。
 前述の私たちのライブ・ハウスは大阪の大国町というところにあって、
 暴動の現場とは目と鼻の先だったので、ライブが終わると毎日見に行って、
 ケンカしたり、火をつけたりしていた。

 街中火の手が上がる中を、放水車、機動隊、学生、土方、ヤクザ、ゾク、
 子供、パンクス、フォーク・シンガー、主婦などが、カオス状に溶け合い、
 混じり合いながら、それぞれ無法の限りを尽くし倒している。
 仕事帰りのサラリーマンが、通りかかったアベックのカローラをひっくり返して
 火をつけたり、高校生くらいのガキが、次々にコンビニを襲うのを見て、私は
 血が逆流するほどの興奮を覚え、自らも、どんどん犯罪を重ねていったのだった。

 今ならきっとケーサツの人も笑って許してくれると思うが、あの南海電鉄の
 〈かすみ町〉の駅舎に火をつけたのは私かも。正確にはガソリン持って
 うろうろしたヤクザ風のおっさんが、発狂して「俺は絶対何かを燃やしたる」と
 叫んでるのを聞き、やはり同じく発狂状態にあった私は「吠えてばっかりやなくて、
 やるんやったら早くやれ」みたいなことを言ってしまったのだ。したらこのオヤジ、
 本当に駅の売店のシャッターに穴開けて、そっからガソリン入れて、火つけちゃうん
 だもん。で、「キャッホウ!」とか言って、走って逃げちゃうんだもん(笑)。
 もう駅は五分で全焼!私らも逃げに逃げたね〜。千キロは走ったかもしれないね。

 逃げてる最中、通りの自販機のカゲから、こっちこっちって手をばたばたさせてる
 ヤツがいて、行ってみると、ウチのPAのスタッフのOだった。こいつがまたひどい
 ヤツで、そこら中の酒とかジュースの自販機を壊して、中からドリンク出して
 飲みまくってんの。「金は盗ったのか」と訊くと、「テヘヘ」なんて言ってんの。
 公安当局の皆さん、あの時自販機壊したのはコイツですよ、
 捕まえた方がいいですよ。悪は絶対許してはいけないと思う。(p32-34)

ギンガ

ギンガ

  • 作者: 山本 精一
  • 出版社/メーカー: リットーミュージック
  • 発売日: 1999/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

生田武志『ルポ最底辺』+山本精一『ギンガ』:ファミレスは僕の部屋:So-netブログ

出典: web.archive.org




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